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⑧ゲノム不安定性は認知機能低下と関連する:前立腺癌サバイバーの全ゲノムシーケンス研究 小林 拓郎 先生(順天堂大学院泌尿器外科学講座 )
2022.08.02
学会
小林拓郎 先生(順天堂大学院泌尿器外科学講座)
Y染色体のモザイク欠失(mosaic loss of chromosome Y; mLOY)は、Y染色体が失われた細胞と正常な細胞が体内に混在する状態のことで、加齢とともに有病率が上昇し、がんや心疾患などの加齢関連疾患との関連が報告されていることから、生体のゲノム不安定性を示す老化指標として注目されています。
本研究ではmLOYと認知機能およびサルコペニアとの関連を検証していました。前立腺癌術後再発のない患者197名から血液を採取し、DNAを抽出後、次世代シークエンサーDNBSEQを用いて全ゲノムシークエンス解析を行い、認知機能の評価にはミニメンタルステート検査(MMSE)を用い、サルコペニアの評価には5回椅子立ち上がりテストと生体電気インピーダンス法から得られた骨格筋量データを用いて、サルコペニア及び重症サルコペニアを定義していました。
その結果、MMSEのスコアとmLOYは有意に関連していましたが(P = 0.01)、サルコペニア及び重症サルコペニアとmLOYは関連を認めませんでした(P > 0.05)。この検証より、認知機能低下にゲノム不安定性が関与していることが示唆されました。
【所感】
本研究グループの別の演者の発表では、70代の20人に1人がmLOYであるという報告もあるようで、摂取エネルギー量とmLOYリスクも相関があったとのことでした。また最新の研究ではmLOYの男性では心不全を含む様々な心血管病の予後が悪いことや、マウスを用いた研究ではmLOYではY染色体のない心臓マクロファージが出現することが原因となって、心臓の線維化が悪化することが判明したそうです。今後、老化・疾患マーカーとしての利用や治療方法の開発が進むことに期待します。
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