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③地域・職域で求められる効果な保健指導と医療連携を考える 野口 緑 先生(大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座)

2023.10.19

学会

野口 緑 先生

大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座

これまでの演者らの実施したコホート研究により、「果物・魚・牛乳の摂取量」・「ウォーキングまたはスポーツへの参加頻度」、「喫煙頻度」、「睡眠時間」、「アルコール摂取量」、「BMI」の項目を評価することによる「望ましい生活」をしていると70~80歳を超えても余命に大きな差が付いていることが明らかになっています(Sakaniwa R, Noguchi M et al. Age Aging 2022)。一般の方はこれらの「望ましい生活」を知らないからやらないわけではなく、実行することが難しいのです。

これまでの行動変容手法では

・特定の生活習慣の改善を促す

・危機感をあおる

・具体的な行動目標を示す

をやりがちなのですが、これだと自分事として捉えにくくなり行動の変容と継続に至ることが困難です。実際に健診で重症者と指摘されても1年後の4~5割が未受療であることが報告されています。単に「行動してください」ではだめなのです。

現在の健診結果表を見ても、それぞれの項目で「病気」か「病気でないか」を判断するようになっており、いま病気でなければ直ちに行動することにはなりません。これは医療管理の考え方を予防医療にも持ち込んでいることが問題なのです。医療管理では「自覚症状・問題意識がある」のですが、予防医療では「自覚症状がない」ので「何かあったら病院に行くから今は大丈夫」と考えてしまうのです。

これには保健指導の方向性の転換が必要で、それには資料の整備が有効でした。

・血圧が血管に対してどのようなダメージを与えているか、実感やイメージが湧く指導

・自覚症状では判断できないことを理解させる資料

・服薬目的、薬の機序が理解できる学習機会や資料

つまり、一般の方でも判断するものさし(判断基準)があれば、自ら行動を選択できるのです。

キーワードは「実感」(させること)

従前の保健指導は、「望ましい方法の提示」→「説得」→「受容」→「共感」の流れで進めるとされてきました。これは病院内では有効かもしれませんが、これからの保健指導は対象者が自ら学び自ら選択するための支援、学ぶ機会を提供することが重要です。

演者らは自分の健診の検査結果から「自分の血管障害のステージがどこまで進んでいるのか?」を把握しやすくするシート(’Where am I?‘チャート Noguchi M et al.JE 2019)を作成し、重症化ハイリスク者を対象とした大規模な臨床試験「自治体における生活習慣病重症化予防のための受領行動促進モデルによる保健指導プログラムの効果検証に関する研究(J-HARPスタディ)」を実施して効果を検証しました。その結果ですが、12カ月時点での受療率が対照群44.5%から介入群58.1%と増加(多変量調整HR1.41)、脂質異常群ではその効果が顕著でした(多変量調整HR1.59)。このことは、同じ時間を保健指導に投入しても、行動変容に対し4割から6割増しの効果的な効果を得られたことを示しています。この効果は1年後の健診時においても介入群の方が有意に服薬を持続していることも示されています。

演者らの試みとして、自分のカラダの状態を数値データで理解するように支援をしています。具体的な保健指導の例では、あるメタボリックシンドロームの男性については、メタボ+脂肪肝なので減量が必要で、食事・運動の改善について指摘します。アルコールが原因の一つなので節酒を勧めます。本人が受容できるような場の設定や説明をしてきました。

この方に関しては、「内臓脂肪の蓄積による代謝異常」を下記の様に各検査項目の検査結果と代謝を結びつけながら説明しました。

・内臓脂肪の蓄積により遊離脂肪酸やTGが高値になり脂肪肝になる(ALT、γGTP上昇)

・内臓脂肪の蓄積による尿酸産生過剰と高インスリン血症による尿酸排泄低下により尿酸値が上昇

・高インスリン血症によるNaの再吸収の促進が拡張期血圧上昇につながる

自分のカラダの変化をデータで体感してもらいます。

また、「心電図変化や腎機能低下には至っていない今が予防のタイミング!」であると伝えます。さらに、内臓脂肪を減らすのがキーだと分かったら、いつ内臓脂肪が増えたのか?今の食生活、身体活動を探りながら内臓脂肪=中性脂肪に関連する栄養素の摂取について、将来の見通しを一緒に考えていきます。

これらの介入を2000年から尼崎市職員で介入をしたところ、なんと翌年から心血管疾患による死亡者がなくなったという素晴らしい結果が得られています。また、尼崎市民に対しての介入研究では、急性心筋梗塞による死亡比率が低下したことも確認しています。

また、J-HARP研究では、保健師の専門職である公衆衛生専門職による介入が特に有効であったことも示されており、治療管理と予防の専門家の連携によって職域健診のフォローがなされることが有効であるとしました。

所感ですが、健診を受診する当事者の立場で聴講し、大変腑に落ちる講演内容でした。私自身も、このように検査数値の意味、相互の関連を理解できていたら、もっと早く行動変容をしていたかもれません。野口氏は元々尼崎市の職員として、実際の職域健診の評価試験を実施された方でした。実際にこれらの手法・ノウハウの効果は証明されていますので、もっと一般健診の場にも展開されることを願っています。

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