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②循環器領域のゲノムリスクスコア発展と臨床実装に向けた展望 伊藤薫 先生 (理化学研究所生命医科学研究センター 循環器ゲノミクス・インフォマティクス研究チーム)

2022.08.28

学会

伊藤薫 先生 (理化学研究所生命医科学研究センター 循環器ゲノミクス・インフォマティクス研究チーム)

この発表では、複数の遺伝子多型による遺伝的リスクスコアについて「GRS(Genetic Risk Score)」という名称を使用しています。GRSは遺伝的なリスクの累積を示しており、複数の疾患発症リスクとの関連について、GRSが上位数%の群において疾患発症のリスクが指数関数的に増加することが2018年に海外の研究グループによって示されており、特にハイリスクの群を特定できることがGRSの有用性であると言えそうです。また、GRSによって20年のフォローアップで冠動脈疾患イベントの評価を行い、GRSと生活習慣の評価が同等であること、GRSハイリスク群の一部において生活習慣の介入によってイベント発症リスクを相殺できたと報告されています。さらに、従来の臨床リスクにGRSを併用することで予測性能を向上させることができることも示されています。

演者らのグループの研究により、冠動脈疾患GRSによる心血管死リスクの層別化、脳卒中死を除く虚血性心疾患死と心不全死の発症予測が可能であることが示されました。同様に、心房細動GRSも心血管死リスクを層別化し、こちらは脳卒中死を予測することができました。また、心房細動GRSが心房細動の若年発症リスクを予測できること、心房細動の診断がない心原性脳梗塞を予測することができるとしました(投稿中)。

一方で、複数の論文でGRSについては結果が矛盾する報告があり、PGSの作成・評価の過程について透明化・標準化、そしてオープンな環境で性能・性質を広く検証することが必要であるとしました。臨床実装に向けて、最終的には前向きの独立コホートで性能を証明する必要があり、米国ではすでに多くのGRSの臨床評価試験が走っているようです。

民族間差も重要な要素であり、メタGWASにより得られた冠動脈疾患GRSの評価では、日本人、欧米人それぞれ単一のGWAS(BBJ、UKBB、C4D)よりもそれらを統合したGWASから得られたGRSの方が高性能であることが示されました。実際、冠動脈疾患だけでなく心血管疾患発症を予測できましたが、脳卒中は予測できませんでした。日本人の疾患発症を予測するならば日本人のデータを含んでいることが必須ですが、民族間差よりも、症例(ケース)数の登録数が影響することもあるようです。

上記GRS群と久山町研究の冠動脈疾患臨床スコアとの相関は低く臨床スコアとの相加効果が期待されましたが、実際には臨床ベースモデルにBBJ、UKBB、C4Dの3つのGRSを加えたモデルだけが臨床モデルに対する相加効果を示しました。GRSの性能が高くないと臨床リスクとの相加効果が得られないようです。

興味深いのは若年者ほどGRSの予測性能が高いということです。これについては、高齢者は環境要因の影響を長く受けていることに起因するのではないかと考察されていました。

質疑において、アレル頻度が異なる民族のGWASデータベースを統合することにより性能が高くなることについて質問がありました。これに対し、各民族のGWASで得られるSNPはp値が低値となるリードSNPが少し異なるのは、連鎖不均衡ブロック(LDブロック)が異なるせいではないか。疾患発症メカニズムは各民族によっても差はないがLDブロックが異なるのでずれるのではないかと解釈している。異なるLDブロックの民族のデータを重ね合わせることで(メタ解析)、規模が大きくなることと本当に原因となるSNP(causal variant)のファインマッピングの効果が得られたと考えているとのことでした。

また、現在のGRSがSNPアレイベースのコモンバリアント群により構成されていますが、今後全ゲノム解析によるレアバリアントも対象にしていく必要性までAmerican Heart Associationによって提言されたことについて発言がありました。これについては莫大な全ゲノム解析コスト負担と、逆に予測性能が低下するのではないかと危惧されており、レアバリアントは別に扱っていく必要があるのではないかと述べました。

個人的な所感となりますが、GRSを用いた疾患ゲノム研究は急速に進んでおり、国際的に競争が進んでいますが、データベースは各民族の数と症例数の数が重要あるため、臨床的な有用性についてはまだエビデンスの蓄積に時間が必要と思われます。ただし、そうは言っても臨床実装に時間がかかりすぎると研究の意義が問われますので、疾患横断的にゲノム情報を取得する仕組みの構築と、疾患別にエビデンスレベルが高い対象を選定し実装化する試みの両方を分けて推進する必要があるだろうと考えました。これは現在の商用ゲノム解析サービスとは異なるものと考えます。

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