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コミュニティヘルスケアにおけるアンチエイジング

2023年8月29日

ビッグデータ活用によるアンチエイジング社会実現 ~沖縄県における試み~

益崎 裕章 先生 (琉球大学大学院医学研究科内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座 第二内科)

沖縄県はかつての健康長寿ブランドが肥満症・糖尿病・脂肪性肝疾患の流行により急速に崩壊し、2020年の厚労省生命表で成人男性が43位、女性が16位と過去最悪の結果でした。かつてのようなアンチエイジング社会の復興を目指し、桝崎先生ら琉球大学医学部と久米島、国内外の企業が参画して始めたのが久米島デジタルヘルスプロジェクトでした。

肥満が全国平均の1.5倍に近い高いメタボ頻度を持つ久米島では、健康不安が広がっていますが、一方で医療情報基盤が整備されており、データ収集が容易な環境が整っていました。このプロジェクトは、デジタルヘルスデバイスから得られた多様なデータをスマートフォンと連動させてクラウド化し、個々人の医療情報や腸内フローラ・メタボローム解析などの生体情報を人工知能(AI)が分析し、生活習慣病の予防や進展阻止に寄与する要因を探索することで、個別化医療(予防)や個別化栄養を目指す取り組みです。

腸内フローラ解析では、健康な肥満者と不健康な肥満者で、特定の腸内細菌の割合に差が見られ、また血清代謝物にも差が見られ、これら解析が肥満症のリスク評価や2型糖尿病の発症進展リスク評価に有用であることが示唆されました。

また現在は成人だけではなく学童期・思春期の肥満も問題となっています。この時期の肥満は、成人期の肥満や生活習慣病の主要なリスク因子であり、中でも思春期の肥満者は、その70-80%が成人肥満になると言われています。そこで琉球大学は東海大学や武庫川女子大学と共同で、学童期の食環境とBMIの関連性を研究するため、学童の朝一の尿を調べる取り組みを行い、学童期の食環境の基盤構築の重要性を指摘しています。こうしたアプローチが、ライフコース全体を俯瞰して生活習慣病の予防や治療戦略を展開する上で重要であると言われていました。

国民の医療費の増加に対処するためには、生活習慣病の予防や進行阻止が重要であり、未病分野の活性化が欠かせません。しかし、日本では国民皆保険制度があるため、「未病」の段階で行動することやそのためにお金を支払うことに対する姿勢は、欧米と比較してかなり消極的です。未病の改善を通じて健康寿命を延ばす考えを浸透させ、実行するための最適な方法について、当社も検討していきたいと考えています。