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⑪ヒスチジン含有ジペプチドであるアンセリンは心筋細胞肥大および圧負荷モデルマウスの心収縮能低下を抑制した 色川 雄大 先生(静岡県立大学・薬・分子病態学分野 )

2022年8月2日

色川 雄大 先生(静岡県立大学・薬・分子病態学分野)

アンセリンは海洋生物ではマグロ、カツオ、サケ、サメなど、陸上動物では鳥類の筋肉に多く含まれており、尿酸値を下げる機能性関与成分であることからその目的でサプリメントとして販売されています。今回はそのアンセリンの心不全の治療効果について検討した発表になります。発表者達は天然由来化合物ライブラリーを用いて心筋細胞肥大を指標にスクリーニングを行った結果、アンセリンに着目したとのことです。

検証にはラット初代培養心筋細胞にアンセリンを処理後、フェニレフリン (PE) による肥大刺激を行い、48時間培養したサンプルを使用していました。結果、アンセリンはPEにより増大した心筋細胞面積、心肥大反応遺伝子のmRNA量、H3K9のアセチル化を有意に抑制していました。また心筋細胞肥大や心不全発症に重要な役割を果たしている核内転写コアクチベーターp300のHAT活性も阻害していました。

これより、アンセリンは心筋細胞核内に存在するp300のHAT活性を阻害することで心筋細胞肥大および圧負荷による心収縮能低下を抑制することが示唆されました。

【所感】

心疾患は日本人の死亡原因第二位となっており、中でも心不全は近年急増しています。アンセリンには血圧降下作用も確認されており、今後は新規心不全予防薬・治療薬としての活用が期待されます。