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②デジタルヘルス、特に持続グルコースモニタリング(CGM:Continuous Glucose Monitoring)の進化

2022年5月24日

CGMとは?

CGMとは皮下に刺したセンサーにより皮下の間質液中の糖濃度(間質グルコース値)を持続的に測定することで、1日の血糖変動を把握する医療機器です。この機器の進化速度は著しく、今では自分自身のスマートフォンで血糖のトレンドを確認することが可能です。この時系列データの分析により、患者さんは自分自身の行動を振り返ることができ、極端な血糖値の変動が生じないように管理しやすくなっています。また、このデータを共有することで遠隔診療への活用も可能になっています。さらに手指採血で測定する血糖自己測定(Self-Monitoring of Blood Glucose:SMBG)のデバイスでは例えば1日2回の測定では食後高血糖や低血糖を十分に評価することが難しかったのが、スキャンの回数を増やすことでリアルタイムに近いデータを取得することができます。また機種によっては手指採血による校正が不要になるなど心理的負担がかなり低下しています。

CGMのさらなる進化

このように、日進月歩の様相を呈しているデバイス開発ですが、今後、センサーの使用可能な期間の延長、さらには電源を搭載しないで1年間稼働可能な埋込み式センサーの開発が進むとのことです。さらに、インスリン治療を行っている患者さんが使用している持続皮下インスリン注入(インスリンポンプ)にこのリアルタイムCGM機能を追加したSensor Augmented Pump(SAP)が既に日本においても導入されていますが、すでに低血糖時にインスリン注入を中止できるだけでなく、CGMデータから低血糖の発生を予測することができる機能も有しているとのことで、さらに機能拡大が期待されます。その方向性の一つとして、PHR(Personal Health Record)の活用です。CGMに関しては、食事療法とのセットになりますが、一部の病院では食事を食べる前に画像を記録する指導と結果の分析とフィードバックなど管理栄養士を含むチーム医療でサポートしているようです。一方で、医療現場で膨大なCGMデータを分析・可視化し、新たなインサイトを得ようとする試みがされていますが、データの標準化や解析人材の不足によりどこでもできる状況ではないようです。

血糖値測定デバイスとPHRの融合によって早期に介入することにより健康寿命を延伸する可能性は?

ここからは個人的な見解・予測となります。最近のデジタル化されたPHRにAI予測技術の発達が加わることにより、より個別化された健康管理が急速に進むと考えました。今回の演題でも発表されていましたが、食事画像から栄養素やカロリーを予測するAIサービス、逆に糖尿病や高血圧、がんなどの持病を持つ人が食事を管理するためのレシピアプリもすでに実装が進んでいます。現在では摂取カロリーや栄養成分など正確性にはまだ弱いようですが、さらに、スーパーやコンビニ、ネットショップからの食品の購入記録や活動量、そしてデバイスからのフィードバック情報を統合することにより、その人にとって最適な血糖管理が可能かつ栄養成分的にも十分な食事パターンを予測することが可能になるでしょう。将来的には、内食時のレシピや食材の選定、外食時のメニュー選定の時に最適な提案ができるのではないでしょうか。さらに、食べてはいけない食品なども購入時にアラートが表示されるとよいと思います。このようなデバイスとPHRとの連携は重度の糖尿病患者が治療に活用する以外にも、血糖値やHbA1cが高めの方や、軽度肥満、メタボの方の方などにも活用できるソリューションとなる日がそう遠くないのではないかと考えてしまいました。もちろん費用の問題はありますが、ご自身の健康の未来の予測精度が上がることは確実で、トータルの医療コストの削減効果、そして健康寿命が延伸する可能性が明確になると予想します。

これまで、血糖値を管理するデバイスがあるとは知ってはいましたが、ここまで開発と臨床実装が進められていることは全くフォローできていませんでした。5年後の先を予測することはかなり難しいですが、我々の想像を超えて来ることは間違いないだろうと思います。