一方で予防については、飲水以外の再発予防法の開発について実質的な進歩はないようです。実際今回の発表でも予防に関する演題数は手術療法に対してかなり少ない印象でした。とはいえ基礎研究の段階ですが、結石が形成される作用機序について分子レベルでの解明が進んでいます。例えば、シュウ酸カルシウム結晶の生成因子としてオステオポンチン(OPN)が必須であることが既に示されていましたが、名古屋市立大の田口和巳医師らの研究グループは、結石ができやすいヒトは炎症抑制型のM2マクロファージの機能が低下しており、M2マクロファージの機能を強化することで結晶を溶解・貪食する可能性があることを示しました。ナノ粒子と組み合わせたDDSの手法開発も行っているようです。
四谷メディカルクリニックの阿南剛医師らの研究グループは、糖尿病治療薬であるSGLT2阻害剤投与群が対象群に比べ尿路結石割合が低下していること、また、マウスモデルにSGLT阻害薬のひとつであるフロリジンを摂取させたところ、飲水量や尿量を増やすことなく腎臓結石形成を有意に抑制したこと示しました。そしてSGLT2阻害剤により糖の取り込みを抑制、OPNやTGFβなど炎症性因子のシグナルを低下させ、結石を抑制したという仮説を提示しました。SGLT2の投与は尿pHにも影響しているようですが、まだ議論の余地がありそうです。また、糖鎖変異型のOPNが発症因子の一つである可能性についてマウス、ヒト検体を用いて示しました。