金留理奈 先生(キリンホールディングス株式会社)
ホップ由来のビール苦み成分であるイソα酸が認知機能改善効果やアルツハイマー予防効果を示すことを明らかにしたという発表でした。ホップイソα酸はとても苦いので、キリンは独自の熟成加工法を確立し苦味を1/10にまで低減した熟成ホップ由来苦味酸(MHBA)を開発しました。この成分は、非臨床試験にて認知機能及びうつ様行動を改善すること、さらに健常中高齢者対象の無作為化比較試験で、MHBAの継続摂取により認知機能及び気分状態が改善されたことを報告していました。MHBAは消化官の苦味受容体へ作用することで迷走神経刺激を介して認知機能を増強していると考えられています。この結果から、MHBAの摂取は脳腸相関を直接活性化して脳機能を改善するための新しいアプローチとなることが期待されています。
【所感】
ビールからこのMHBAを摂取する場合、今回の試験で使用した量であれば約1リットルになるということで、少し現実的ではありませんが、通常の食生活で無意識的に健康維持ができるようになれば、万人に広がると感じました。このような脳腸相関の解明により、今後の日本において重要な社会問題となる認知症や脳の健康についての改善方法が明らかになることを期待します。