◯Citterio Daniel・澤野 理花・前島 健人・柴田 寛之・平岡 隆也・ 山田 健太郎・蛭田 勇樹
慶應義塾大学理工学部・応用化学科
現在のマイクロ流体デバイスはポリマーやガラス製が主流であり、外部装置(ポンプや電源、大型の検出器など)が必要となります。そこでもっと安価で、POCTへの応用を目指したマイクロ流体紙基板分析デバイス(μPAD)の開発についての報告でした。これはインクジェットプリント技術でろ紙へマイクロ流路の作製と試薬印刷を行うため、とても安価に作製可能です。今回の発表では生化学センシングとして、抗原の比色分析の例として、涙液中のラクトフェリンを検出するデバイスと化学センシングとして、グルコース、アルブミン、ヘモグロビンを対象とした多項目同時分析でデバイスを紹介されました。これらは色素が変化した距離により濃度を算出するというものです。また別の比色型μPADでは、尿中のアルブミンとクレアチニンの両方を検出するデバイスに色変化距離の頂点を結ぶ直線を引き、この傾きにより尿中アルブミン指数を目視で検出することが可能であるとの報告もありました。とても簡便で安価に測定できるシステムですが、測定項目によっては検出に30-45分と時間がかかるため、遠心力を加えることで分析時間の短縮を検討しているとのことでした。
紙を基材とすることで、安価であるだけでなく、使い捨てや焼却処分もできるため、メリットは大きいと思いました。また分析対象もタンパク質、金属イオン、小分子と幅広いため、今後実用化に向けた検討が期待されます。