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⑤G4クラスター結合分子としての ビス環状ナフタレンジイミド誘導体の合成と分析化学的応用 小野 健太郎 先生(九工大院工)

2022年9月21日

小野 健太郎・佐藤 しのぶ・竹中 繁織

(九工大院工) 

四本鎖DNA構造は、染色体末端のテロメア DNA 配列やがん遺伝子などで観察され、四本鎖DNA構造に特異的に結合し、その構造を安定化する分子は抗がん剤や、がん関連遺伝子の分析試薬として期待されています。特にテロメアDNAのようにGリッチは連続配列におけるG4が連続したG4クラスターが最近注目されています。これまでに様々なG4リガンドが開発されてきたようですが、それらは通常の二本鎖DNAにも結合するため、抗癌剤としての使用では副作用が問題となっていました。当研究室ではナフタレンジイミドに大きな環状構造をとる置換基を付与することで、二本鎖DNAへのインターカレーション結合を阻害することを見出し、G4選択的に結合する環状ナフタレンジイミド(cNDI)をペプチドユニットとしてリジンを導入したcNDI-dimer を合成しました。今回の発表ではこの分子のG4クラスター識別分子としての可能性を検討していました。ITC測定によってcNDIdimerがG4クラスターに対して著しく高い結合定数を持つことが示唆され、またこの分子はG4モノマーではなくG4クラスターのみに結合することが示されていました。

ナフタレンジイミドは、様々な機能的な官能基を導入することで遺伝子分析へのさらなる発展が可能になるようで、今回の学会でも本発表以外にナフタレンジイミドに関する報告がいくつかありました(miRNA検出法の開発やSARS-CoV-2の四本鎖 RNAの検出など)。今後、この分子の実用化が期待されます。